ガンだけでなく、病気は体内環境の悪化で作られます。
さて、東洋医学では人間は自然物であり、小宇宙として大宇宙や自然界と相関していると捉えています。当然で、人間は自然の生態系のバランスの中で生かされているわけです。 ところが、現代人は農薬や除草剤をかけて作物を食べ、抗生物質や成長ホルモンを投入した動物を食し、自ら汚した海で育った魚介類を食すようになっています。 このような食事では、当然私たちの体内は汚染され続けています。 ですから、データが示すように、ガンやその他生活習慣病はますます増加し続けています。 当たり前だと思うのですが、医療においては、このことが当たり前になっていません。少し見てみましょう。 19世紀のフランスの医師・化学者・薬学者アントワーヌ・ベシャン(1816-1908)は、微生物(細菌)は宿主内の環境が悪化した際、健康を崩した細胞から生じるのであり、微生物が健康な宿主に侵入して病気を生み出すことはないと考えていました。そして、微生物は不健康な細胞を減らしていく自然の清掃夫の役割を果たしていると捉えていました。 しかし、近代細菌学の開祖として名声を博していたルイ・パスツール(1822-1895)は、当時、病気は外界からやってくる微生物によって発生し、健康な人であっても危険な微生物の攻撃からは免れないと考えていました。 そのため、医学界は免疫力の維持・向上を推進するのではなく、外界からの悪者退治を徹底する方向に定着して行きました。 ところが、パスツールが死の間際に、「私の細菌理論は間違っていた、細菌を取り巻く環境が病気を左右するのだ」と言って、ベシャンは正しかったと自身の間違いを認めたというが、その時はすでに、パスツールの考え方が医学界に浸透し、医療業界も危険なウイルス、細菌等の撲滅を目指す方向に向かって行くのでした。
近年、日本ではますます抗生物質や抗ウイルス剤の使用量が増加しています。 しかし、自然の生態系においても、人体内の微生物群においても、必ずしも絶対的な強者・弱者、勝者、敗者が存在するわけではないのです。全てが重要な存在価値を持って拮抗関係を維持して共生しています。このような現実から、病原菌を敵とみなして殺そうとする従来の発想は改めて行くべきでしょう。 病原菌自体が病気の元凶なのではなく、拮抗関係というバランスを崩したことに問題があると考えられます。日和見感染を起こすケースでは、特定の病原菌を退治しようとするのではなく、むしろ、存在価値を認め、バランスを維持して共生できるようにしていくことを考えて行きたいものです。 最近になり、さまざまな病気が私たちの腸内環境との関連が解明されてきました。そして、腸内環境は単に善玉菌と言われている細菌類のみで成り立っているのではなく、悪玉菌と呼んでいる細菌類や日和見菌と呼んでいる細菌類のバランスが大切なことが理解されています。今はそう呼んでいるだけであって、本当はもっと深い役割があるのでしょう。 病原菌を殺したり、何でも消毒したりするよりも、生活習慣を整えたり、心の持ちようを整えたりして、崩れた拮抗関係を回復させ、体の内外の微生物群のより良い共存に持っていくことの方が重要になっているように思います。 我々を生かしてくれていることに謙虚になり、自然界に感謝して過ごして行きたいものですね。 (参)食物養生大全、底なし闇の[癌ビジネス]