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ほほえみの効用

10年以上前でしょうか、岡山県吉備高原の山奥で自然食の宿「百姓屋敷わら」で有名な船越康弘さんのお話しをお聞きしたことがあります。そこで提供されていた重ね煮が有名です。船越さんは、食により人生をイメージどおりに楽しんでいる方で、とても楽しいお話しでした。

今回は、船越さんのお話しをまとめた冊子から、「ほほえみの効用」をご紹介します。

 

・・・気の合わない人、嫌いな人というのはどうしてもいます。その場合どうするか。キリスト教のシスターであり、教育者でもある渡辺和子先生が見事に教えてくださっています。

「一番付き合いにくい人、一番嫌いな人、そういう人こそあなたの笑顔を一番必要としています。その人に微笑むことができれば、あなたは自分を向上させることになります。素晴らしい宿題をいただきましたね。」

言うが易し行うは難しの見本のようなことですが、嫌いだからとその人を避けるのは、自分の成長を自分で止めてしまうようです。相手の良いところが見えるようになるには、それだけ自分が優れていなくてはなりませんから、自己の成長のために必要な存在と考えてみてはどうでしょう。そして、嫌いな人が来たら、その嫌いな人こそ私の笑顔を必要としているのだと思って、ニイ、ニイと、嘘でいいから笑ってみるのです。もちろんこれは難しいことです。つい苦虫をつぶしたような顔になってしまいます。でも、無理に心を込めなくていいですから。

人間の素晴らしいところで、こういうニコニコの形を作ったら怒りは出てこないようになっています。試しに笑顔を作って「馬鹿野郎」と言ってみてください。言いにくい上に、どう頑張っても怒りの感情は出てきません。人間っていいですね。一週間、鏡を見ながら嫌いな人のことを思い浮かべてやってみましょう。そうすればその人が来たとき、条件反射でニイとなります。

例えば、ご近所に気難しい人がいて、ことあるごとに文句を言ってくるとするでしょう。そういうときも、すみません、すみませんとニコニコ笑うのです。怒られても怒られても笑うのです。すると向こうが相手にしなくなりますから。怒る人というのは怒られ続けたり、否定され続けの人生だったのでしょう。だからその人の後ろ姿に向かって、辛い人生だったんですね。どうぞ怒ってくださいという気持ちで、嘘でもいいから、「ありがとうございます」と声を掛けてあげてください。怒ってギャンギャン言う人に「ありがとう」と言えたら、たいていの問題が解決できます。嫌いな人とのつきあい方はそうする。そのことで一番得をするのは自分ですから。

人につらく当たる人は、それをせざるを得ない何らかの理由があるのです。小さい頃にいじめられた、奥さんに無視される、子どもは言うことを聞かない、経営はうまくいかない、何をしても借金ばっかり残る。その人には誰かを否定しなくてはならない理由がたくさんあるかもしれないのです。

私が岡山県の川上町に住むようになったとき、近所のあるおじさんは私を見るたびに文句ばかり言ってきました。私は集落の中で一番立派な元庄屋の家で、しかも山のてっぺんの家に住んでいたので、「どこの馬の骨かわからん奴が入って来て、俺らを見下ろしている」という憤りもあったのでしょう。その上、“わら”がどんどん繁盛していったものですから、そこまで言うかというくらいに徹底的にいじめられました。ですから私はそのおじさんが嫌で嫌で、それは半端ありませんでした。そのとき、やはり渡辺和子先生の言葉に出会ったのです。

「もし、あなたが誰かに期待したほほえみが得られなかったら、不愉快になる代わりに、むしろあなたからほほえんでご覧なさい。実際、ほほえみを忘れた人ほど、あなたからそれを必要としている人はいないのだから。」

でも、殺してやりたいぐらい憎たらしい奴なんですよ。二〇〇メートル先から来ても鳥肌が立ってしまうような奴に笑えますか。

それでもやってみました。最初は引きつりながらひたすらニッコリ笑うように努力したのです。二週間もすると楽勝になりました。おじさんの軽トラの音が聞こえたら条件反射でニコニコッ。おじさんは「ふん」という態度でしたが。

けれども忘れもしない二カ月後のある早朝、おじさんがいつものように軽トラでうちにやって来て「おい船越!」。またいちゃもんつけに来たなと思ったら、「今度少し多めに白菜を作ったんで、お前のところはようけ客が来るから漬物でもせえ、やるわ」。農家が少しと言ったら少しじゃないですよ。数えたら百個。何が起こったか。ニコッとするだけで二カ月後には白菜百個。この野郎、この野郎と辛い思いをするのと、ニコッとするだけで白菜百個、どっちが得ですか。・・・

 

笑顔は最高の化粧品。笑う門には福来る。常に心を明るく朗らかに保って、口角を上げて、笑顔という幸せな波動を放射して過ごしましょう。

 

(参)わらのお話し