”聞こえない音”が私たちを育んでいる?
私たちの身の周りには、多くの音が飛び交っています。
その中には、耳に聞こえる音以外に、ヒトに聞こえない音も含んでいます。
ヒトの耳は、およそ20ヘルツから2万ヘルツの音を聞くことが出来ますが、その他の生物である虫、鳥、動物はヒトの聞こえない周波数帯も使って会話しています。
この2万ヘルツ以上の“聞こえない音”、超音波とも言うべき超高周波を私たち人間は全身で聞ける「耳」があるのです。
それは、全身の皮膚の細胞です。いくつかの実験で、皮膚が超高周波を聞いていることが実証されています。
そして、「聞こえない音(非可聴音)」は「聞こえる音」とセットで心身にさまざまな健康効果をもたらすことが分かっています。
具体的には、脳のさまざまな部位で血流が増加し、脳が活性化します。リラックスの時に示す脳波のアルファ波が増えたほか、自律神経系の働きが良くなることでストレスホルモンが減少し、免疫系の機能も改善しました。また、被験者の感覚面でも、音楽を聞いた時の感動がより大きくなり、映像付きの場合はその映像がより美しく感じられたといいます。
このように、「聞こえる音」と「聞こえない音」が組み合わさった理想的な音環境がジャングルなどの大自然の音環境になります。
実験では、32キロヘルツより低い超高周波音では脳の活性がむしろ下がっていたのに対し、32キロヘルツよりも高い超高周波音においては、一律に脳が活性していました。なかでも最も高い活性が見られたのが「80~82キロヘルツ」の超高周波音でした。
つまり、超高周波音でも一定の周波数を超えたものでないと、私たちにポジティブな影響をもたらさないのです。ですから、熱帯雨林のジャングルが理想であり、日本の屋敷林やバリ島の村里の環境音でもだめでした。
しかし、人の手でつくられたものでありながら、美しい音色と共に「聞こえない音」を再現できるものがあります。それが「楽器」で、なかでも有益な超高周波音を発するものは、伝統的な楽器やシンプルな楽器に多く見られます。尺八、笙、篳篥(ひちりき)、龍笛、タンバリン、オルゴール、チェンバロ、バグパイプなどです。ちなみに、ピアノからはほとんど発生しません。
また、楽器ではありませんが、風鈴や水琴窟の音にも超高周波音が豊富に含まれています。虫の鳴き声や鳥のさえずり、川のせせらぎなどの自然豊かな環境が理想ですが、このような楽器を楽しむことで同様の健康効果を得られるのです。
実験では、森の音をたった1分聞くだけで、ネガティブな気分の指標が一律に低くなり、怒りや敵意にいたってはゼロになることが分りました。その反面、活力が高まり、総合的に気分が良くなります。
実は、超高周波音によって活性化する脳の部位には報酬系が含まれていて、報酬系が高まると、環境中から入ってくる感覚や感性の情報は、より美しく快適に感じられることが分かっているのです。
アフリカ各地では楽器を置き薬代わりにしています。環境音をうまく利用することで、気分を良くし、健康効果を得られます。
ぜひ、「聞こえない音」を日常に取り入れて健康アップを図りましょう。
(参)脳に効く!「聞こえない音」と「見えない光」