治癒に導くがんのサイモントン療法とそのエクササイズ、「喜びリスト」を作成してみよう。
「がんが消えることをイメージしてがんを癒す」としていますが、実際は、症状が悪ければ悪いほど、治療や人生によりよいイメージを持つということは至極困難で、ときに短絡的なアプローチは逆効果です。 むしろ、「よいイメージを持つに至るまでのきめ細やかな過程」こそが真に大切で、サイモントン博士はこの部分を、実に繊細で多角的、かつ包括的なアプローチをもって、がん患者さんや援助者へ介入をされています。 病気というものは、その症状が緩和される、あるいは治まるだけでは治癒とは言えません。物理的にがん細胞が死滅することが治癒なのではなく、そのがん細胞をつくり上げた原因から癒さなければなりません。 その人のすべて(個性、家族関係、地域社会、文化的背景など)を包括的に見ていく必要があり、私たちの心も身体も、すなわち肉体的、精神的、霊的バランスと言えます。 サイモントン療法はさまざまなトピックと技法を設け、体系的・包括的に全人的なアプローチをもって、患者さんの治癒に取り組んでいます。 特に、がんになったことの意味を見つけ出すこと、がんが伝えるメッセージに耳を傾けることから始まります。 これはがんだけに限ったことではありませんが、がんも含めて病気は体のバランスを崩していることを教えてくれるメッセージです。これは、肉体的な面だけではありません。 私たちの生まれてから死を迎えるまでの人生の目的は、唯一、「幸福を経験する」ということです。「幸福」は、人間のもっとも基本的で純粋な欲求です。この生きる目的の本性から外れているので、軌道修正するよう病気が教えてくれているのです。 そのために、まずサイモントン療法では、最初の課題として、「自分の人生に喜びや深い充足感をもたらすものを、最低5つリストにあげる」ということをしてみます。
私たちの生きる姿勢において、とりわけ、がん等の病気にかかったときに大切なことは、「私たちにとって悪いものは何なのか」ではなく、「私たちにとって、よいものは何か」に目を向けることです。「病気をどうしたらよいか」ではなく、「元気になるにはどうしたらよいか」に注意を払うことなのです。 人間は喜びがもたらされているとき、体内でさまざまな化学物質を生成して免疫力を高めたり、モルヒネにもまさる鎮痛作用を与えたりするなど、自らを治癒に促すことが神経科学者キャンディス・パートらの研究によって分かりましたが、サイモントン療法の現場でもこのような現象が多く見られます。 私たちには本来、「自己治癒力」という、治療や薬に頼らなくても自分自身を癒す力が潜んでいますが、自分自身により多くの喜びや幸福感をもたらすことで、内面から自己治癒力を高めることができるのです。ワクワクすることで湧き上がるエネルギーは、自分自身を癒しに導いてくれます。 まず初めのエクササイズとして、「喜びリスト」をぜひ作ってみて下さい。 あなたの人生に喜びを与えるもの、深い充足感を与えるもの、人生に意義を与えるもの、または単純にワクワクするものを最低5つあげて下さい。リストの中身は、多ければ多いほどいいでしょう。 もし、どういうときに自分が喜びや幸福を感じるのか分からないという場合には、自分が「気分がよくなる」のはどういうときかに目を向けてみましょう。これは日常の些細なことでかまいません。 温かいお風呂に浸かっている時や自然の風景を見ている時、好きな音楽を聴いている時などかもしれません。 自分自身に正直になって、自分の心に聞きながらやってみるのもよいでしょう。 リストが出来上がりましたら、くり返し見てワクワクして見て下さい。 また、時間の経過とともに、リストに追加して行ったり、文章だけでなく、イラストを入れたり、写真を張り付けたりしても良いでしょう。 (参)サイモントン療法